全国で埋立て事業などに伴い減少を続けている干潟。宮崎は消滅してしまった干潟が9カ所、現存しているのが8カ所と言われています。今回は"生命のゆりかご"という言葉がピッタリの串間市本城干潟を紹介します。
 串間市にある本城干潟は「日本の重要湿地500」「全国干潟50選」に選定され、たくさんの生物が生息することで知られています。干潟に流れ込む本城川は、串間市都井に向かう峠から湧き出て、中園川と黒仁田川と合流し志布志湾に注いでいます。その河口にあるのが、約8haの本城干潟です。干満差2mで、シオマネキ、トビハゼ、ハクセンシオマネキ、アカメなど絶滅危惧種に指定されている生物が住み、コアジサシやセイタカシギなどの野鳥も訪れる豊かな場所です。
 干潟は川や波の働きによって海岸部に発達する、砂や泥が堆積してできる低湿地です。時間により陸地と水面下を繰り返し、淡水と海水が交じり合うため干潟だけにいる生き物もいます。
 また、河川から運ばれてきた有機物が堆積しやすく水深も浅いので、水が温められやすく、干上がるたびに酸素の供給を受けるため藻やバクテリアが多く発生し、それを食べるカニや貝類、それらを餌とする鳥類が集まるというように食物連鎖を行い生きています。
 干潮を迎えた干潟を訪れてみると、白い小石のようなものが無数に散らばって見えました。よく目を凝らしてみるとハクセンシオマネキです。音や気配に敏感で近寄ると一斉に穴の中に潜ってしまいますが、大きなハサミを上下に動かす仕草は愛嬌たっぷりです。
 カニは25種類生息しますが、体長1cmほどのコメツキガニも二つのハサミを上下に動かし、米をついているような姿で見入ってしまいます。
 土と同じ色をしたトビハゼもよくよく見てみると、水際などにみられます。また、フトヘナタリガイやカワアイガイといった細長いカラをかぶった貝は土の上にばら撒かれたように一面に広がっています。無数に見られる小さな穴は生き物が潜む場所、生命の息吹を実感します。
 「本城地区は低農薬地帯に指定されており、下水道も整備されています。それ以外特別なことはしていませんが、昔と同じ環境を保っています。ここは土の中に生物が多いため浄化作用があり匂いがしない、満潮になるとボラ・スズキ・エバなどのたくさんの魚がとれる、最近では青のりも復活してきたんですよ。干潟の素晴らしさを感じます」と語るのは本城河口干潟を楽しむ会の竹下主之さん。
 小学生が遠足に来ることも増え竹下さんが案内役を務めますが、土を触ったり、生き物に触れたりすることが自然保護の気持ちに繋がるのでは、と語ります。

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